焦りが生むミスの連鎖
不運を跳ね返して、絶対に合格するぞ!と、色鉛筆を握る手に力が入った。
ただ、本音を言えば、実力的にボーダーラインに達したかどうかくらいの自分が、一回で合格するのは簡単ではないような気もしている。筆記試験がそうだったように。
そんな自信のなさからくる時間をロスしたことの焦りが、指先に僅かな狂いをもたらしたのかも知れない。練習時よりも、輪郭をはみ出る箇所が、少し多いようである。
最初は気にせず、とにかく、勢いにまかせて描きまくったが、あるところでかなり下手糞な絵になっていることがわかった。練習ではもうちょっとましだったはず。
これ以上の時間ロスは避けたかったが、やむを得ないと判断し、急いで、最小範囲を消しゴムで消して描きなおした。これで、多少は、綺麗になるだろう。
しかし、この2度手間で、残りの時間は減り、焦りはいっそう募ることとなった。募った焦りはさらに指の繊細な感覚を奪い、次の失敗を引き起こす。
その後は、描いては消して描いては消すという悪循環である。それでも、時間ぎりぎりで、上手くはないが、なんとか設定条件を満たした絵を塗り残しなく完成させた。未完成ではないにしても、かなり雑になってしまい合格かどうか見通せない。今から再受験を覚悟した方が落ち込まなくていいかも知れない。合格発表まで晴れない気持ちが続くのか。
言語試験
午後からの言語試験は、造形に比べてあまりプレッシャーを感じていなかったせいか、それとも、午前の造形試験の余韻が頭から離れなかったせいか、あまり記憶がない。
ただ、名前を呼ばれて入室し、試験官2人が見守る中、選択した3匹のヤギのがらがらどんを淡々と語って、退出した。意外と、殆ど試験官とは目が合わず、おかげで見られているという緊張もなく思ったように演じることができたと感じている。
それより、試験室と、コンクリートでなくパーテーションで隔てられている廊下に待機している他の受験者らに声を聞かれているような気がして声の出し方に少し遠慮が入ってしまったようにも感じている。
入室から退室まで、10分くらいか。あっけなく終わったという感じだった。
ようやく終わった試験だが、造形試験、言語試験ともに、筆記試験と違って自分がどう評価されたかがわかりにくく、結果予想は見当もつかなかった。
合格発表まで、晴れない気持ちで過ごすしかない。
ようやく試験が終わったにも関わらず、帰る足取りは重かった。


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